蒼竹ヌーDX

海外FXで稼いでいるので良さが伝われば嬉しい。あとは好きなことを書くブログです。

スポンサーリンク

コロナ緊急融資のカラクリと、それによって生まれるゾンビ企業の行く末

f:id:buchouu:20200911115020j:plain

 

帝国ニュースという日刊の冊子をご存じだろうか。

帝国データバンクが毎日発刊しているもので、「話題企業の紹介」や「企業倒産に関する市場動向や今後の見通し」、「具体的な倒産企業の公表」などが記載されているマイナーな冊子だ。これを見ている人は銀行員か会社経営者、会社内で与信調査などをしている人に限られると思う。

 

私は10年以上前からこの冊子を毎日読んでいる。別に熟読するわけではなく、倒産関連情報を広い視野で見たいのと、何を要因とした倒産が多いのかを知りたいからだ。あとは実際に取引している会社、関連企業が倒産していないかをチェックしている。

 

最近の倒産要因を見ていると、パっと見は「新型コロナウイルスの影響」による倒産がやたらと多い。ただ、よく読んでいくと元々赤字続きのところに、コロナの蔓延があってトドメを刺された会社が多いのに気づく。その中のほとんどの会社は、コロナの影響がなくても時間の問題で倒産していたんじゃないかとも思う。

 

コロナが蔓延して、飲食店や物販店、ブライダル関係の会社などの売上動向を見ていると、前年比90%減とか恐ろしい売上減少になっている会社が多い。コロナが蔓延し、自粛が定着してしまった今、仮にワクチンが開発されたとしても「人が集まる場所」を避ける人は多いだろう。要はコロナが終息しても以前のような売上が戻ることは業種にもよるが難しいということだ。

 

現状の売上状況は最悪、今後の見通しも立たないというような会社が多いということは事実だが、それにしては倒産件数が異常に少ないことに皆さんはお気づきだろうか。理由は1つ。銀行が国の予算を使って「コロナ緊急融資」を積極的に実施しているからだ。

スポンサーリンク

 

少しマニアックな話をする。

銀行は企業に金を融資して資金繰りの安定を図るのだが、銀行が融資をする大前提として、「貸した金が期日通りに返済されるかどうか」を審査し、「この会社は融資しても返済は難しいだろう」と判断すれば絶対に貸さない。これが大原則であり絶対的な基本だ。

 

今、何が起きているかと言うと、ほとんどすべての銀行が「絶対に返済できないと分かっている会社」にも積極的に融資をしているということだ。何故なら銀行は「コロナ関連融資」をノーリスクで取り組める仕組みになっているから。

本来銀行は民間企業だから貸した金が戻ってこなければ経営状況が悪化する。ただ、今回のコロナの影響を受けた会社への融資の財源は、国が財源を確保し、その財源から金融機関を通して金をばらまいている。銀行が独自に企業の財務状況を判断して、融資をすることを「プロパー融資」という。「プロパー融資」は返済されなければ銀行の財務を棄損する。

一方で、今回のコロナ緊急融資は、仮に返済されなかったとしても金を貸した銀行は痛まない。カラクリとしては、国と銀行の間に「保証協会」という機関があって、銀行が融資をする際に、「保証協会の保証」を付ける事で、仮に返済が出来ずに企業が倒産したとしても銀行は保証協会から1円の誤差も無く、全額回収できる仕組みになっている。

 

最近、都市銀行1行・地方銀行1行の支店長と話をする機会があった。その際に、コロナ緊急融資の取り扱いはどんな感じか?を聞いてみたところ、恐ろしい回答が両者から返ってきた。返ってきた回答は以下のような感じだった。

通常であれば保証協会の保証付き融資であっても返済が難しいと判断すれば融資をしないが、今回のコロナ緊急融資はほぼ無審査でカネを貸しまくっている。おかげで支店の貸出金ボリュームは増加し、銀行は特需のような状況になっている。仮に返済されなくても、保証協会が代位弁済(企業の代わりに返済してくれること)してくれるから銀行としては何のリスクもない。今は銀行の秩序というかモラルというものが完全にマヒしてしまっていて「コロナ」と言われれば何でも対応しなくちゃいけないという風潮になっている。その一番の要因は、仮に「コロナで苦しいから融資してほしい」という申し込みが企業からあった際に、銀行が融資を断ると、その断った理由を金融庁に全て報告しなければならないから。そんなことをやっていたらきりがないし、国がそこまでして企業を倒産させたくないのであれば、銀行は返済が到底できないような企業にも金を融資するしかないんです。。」

 

2人の銀行支店長から上記のような回答が返ってきたのを聞いて、開いた口が塞がらなくなってしまった。銀行にモラルが無くなったら終わりだ。国も「コロナ」に関連する倒産を食い止めようと必死になっているのは分かるが、到底返済が出来ないと判断できる会社への融資は止めるべきだ。そもそもこの財源は「税金」である。日本国民が必死になって収めた税金を、返済不可能な会社に銀行を通してばらまいているだけだ。

 

さらにマニアックな話をすると、「コロナ緊急融資」には金額に枠があって、ざっくり計2億円程度の金額が1つの企業に割り当て可能になっている。もちろん年商が1千万円の会社に2億円の融資がされるわけではないが、そこそこの年収がコロナ前までにあった会社に対しては、2億円程度の融資をほぼ無審査で行っているというのだから恐ろしい。

 

しかもその融資条件がまたバカみたいな条件で、金利は超低金利、保証協会に会社が支払う保証料は一定の条件を満たせば無料、返済は融資してから5年間は行わなくて良くて、5年1か月目から5年間に渡って返済していくという内容。

 

いくらなんでもこの条件はバカすぎる。そもそも日本の中小企業の平時での倒産確率は非常に高い。創業から5年後に生き残っている会社は15.0%、10年後は6.3%。20年後は0.3%と言われている。

そもそも創業して5年間で85%の企業が倒産するのに、今回の「コロナ関連融資」は5年間返済を据え置くのだ。バカげている。

スポンサーリンク

 

そうすると何が起きるか。

・直近の倒産件数は大幅に減るが、返済が始まる5年後に一気に倒産する会社が増える

・赤字垂れ流しの会社が世の中に多数存在し、ゾンビ企業のようにダラダラと生き残るが、今回の「コロナ関連融資」を数年にわたって切り崩して使っていき、数年後に資金繰りが回らなくなり倒産する

 

今は平時の感覚を失ってしまった銀行が、赤字会社に金をばらまくことによって倒産が少なく済んでいるが、1年以内には感覚を取り戻すはずなので、そこからは間違いなく赤字会社には融資しない。今現在コロナ不況でGDPの落ち込みがヤバいとか報道で出ているが、銀行が新規融資をしなくなったタイミングで発生する不況の方がよっぽど怖い。それに気づいていない人が多すぎる。

 

その時はまた国が「特別な財源」を確保してゾンビ企業の延命措置をするための融資を銀行にさせるのかもしれないが、単純に倒産の先延ばしをしているだけなのであまり意味がない。日本の赤字国債は消費税を上げようが、その他税率を上げようが、こういう無駄金に使ってしまうので一向に減らないだろう。

 

ゾンビ企業にも存在価値は少しはあると思う(雇用維持など)が、根本解決になっていないし、無駄金をばらまく政策はもう勘弁してくれないかと思う。

 

銀行はバカではない。銀行の融資判断というのは都市銀行でも地方銀行でもある程度横並びでしっかりしている。その判断を「融資判断ど素人」である国が押さえつけてしまっていることに違和感しか感じない。

これは私の持論だが、コロナで経営が悪化している会社で、コロナ収束後の経営見通しも全く立てられないような企業はこの際淘汰されてしまっても良いのではないかと思う。例えば飲食店を経営していて、売上が前年比90%減で赤字。これは結果だからしょうがないし、どんなに優秀な経営者であったとしてもコロナ蔓延で緊急事態宣言が出て、自粛が定着するなんて分からなかったとはずだ。ただ、経営者というのは最悪の事態を想定し、外部環境に柔軟に対応しながら業績を維持・拡大していくのが役割なわけだから、「コロナ緊急融資」を単なる赤字補填資金に充当し、自粛ムードが薄まるのを待ち、以前のように顧客が戻ってくるのを指をくわえて待っているような会社はもう倒産させてしまっていい。

自粛が定着し、来店客数が減ってしまっても経営が成り立ち、黒字を確保できるように商売を変えていく必要がある。そのために銀行がマヒしてばらまいている「コロナ緊急融資」を使うべきだ。こういう思考や行動を放棄して、ただ「コロナのせいで経営が苦しい」とか「外部環境のせいで自分は何も悪くない」、「この外部環境が元に戻らない限り会社経営は赤字のままだ」と思っている経営者は、「コロナ緊急融資」なんか受けずに会社をたたんでしまった方がいい。

飲食店において、コロナ禍でも様々な工夫をして売り上げを維持・増加させている会社だって存在する。経営において思考を停止したら終わりだ。

 

苦しいのはみんな一緒だし、助け合わないといけないのは分かるが、多額の税金を利用してばらまかれている「コロナ緊急融資」を無駄に使っている会社が多いことに恐怖を感じる。このままだと数年後に今以上のとてつもない不況が来ることが目に見えている。国、銀行、会社経営者にはもう少し頭を使ってこの危機を乗り越えてほしいと心の底から思う。

スポンサーリンク