国は在宅ワークの推進を積極的に進めていますね。助成金まで出して。
私の勤務先でも、緊急事態宣言が出てから基本在宅勤務という対応を取りました。
基本的に全社員のノートPCは会社にあるので、それを使ってリモートワークが出来る環
境を構築し、あまり混乱も無く在宅勤務に切り替えられたのは良かったと思います。
ちなみに私が勤めているのは建設業(元請業者)です。
部署によっては在宅勤務は可能ですが、現場で作業する社員は顧客がOKを出さない
限り緊急事態宣言下であろうと、大雨で洪水になろうと通常通りの仕事が求められ
ます。
そういう社員が全社員の6割を占めています。
仮に工事を顧客が止めるなと言っているのに、止めてしまったりすれば、工期が延びる
ことになります。
作っているのが飲食店だったとして、引渡しの工期が延びると延びた分の営業補償を
顧客から求められます。これは業界の常識です。
稼働している現場は1か所ではないので、全ての工事を止めて、それぞれの顧客から営
業補償を請求されることを考えると、社員の感染リスクがあろうが、事情は関係なく
工事は通常通り行う必要があります。
ほとんどの中小の建設会社は、そもそも資本が大企業ほど厚くありません。
要は企業体力がありません。総計して1日数百万~数千万の営業補償を払うとなると
秒速で倒産します。
国の会見などを見ていると、在宅ワークの推進と言っていますが、現実的に絶対に
無理な業種については何も触れていないのが悩ましいです。
現在の法律では、ロックダウンを強制することは出来ず、あくまで要請をすることしか
できないというのは分かります。
ただ建設業において発注者側(顧客)に国から、「工事を止め、工事現場の作業員に作
業させるな。営業補償の一部は国が持つ」などとしてもらわないと、今後また緊急事態
状況下になったとしても通常通り出勤し続けることになります。
「そういう業種を選んだのだからしょうがないだろ」と言われることもありますが、果
たしてそうなのでしょうか?そもそも国が緊急事態宣言を出した場合、在宅勤務出来る
仕事かどうかなんて考えて仕事を選んだ人なんていますか?
恐らくいないでしょう。
在宅ワークを推進するのは賛成です。
ただ在宅ワークが出来ない業種、職種の人をどう守るのかというところまで緊急事態
宣言が解かれた今、国にはしっかり考えてもらいたいです。
幸いにして、わが社の現場担当者たちにコロナ感染者は出ていません。
会社として全社員にマスク、アルコール消毒を配布し、各現場にアルコール消毒を配備
し、現場に入場する職人全員の検温を実施するなど、出来ることは全てやった結果だと
思います。あとは運が良かっただけです。
緊急事態宣言を出すのであれば、外出して仕事をしていいのは、本当に必要な業種、職
種に限定してしまった方がいい。不要不急な工事ではないのであれば止めないといけな
い。発注者(顧客)は自己の都合しか考えないし、工事業者のことなんてハナクソ
程度にしか考えていないので、発注者(顧客)の判断に任せるという今の状況は改善
が必要です。
契約書上では、発注者(顧客)と元請業者は対等な立場で請負契約を締結しますが、実
態は対等な立場なわけがありません。顧客は神ですから。
今回のコロナ関連の政府・都道府県の対応を見ていて、一番良くないことは法律が
適当すぎるということです。
緊急事態宣言とか恐ろしいパワーワードなのに、全く強制力がないというのはもはや法
律でも何でもありません。日本人のモラル意識の高さに法律が助けられた形ですね。ち
なみに緊急事態宣言は新型インフルエンザ対策特別措置法という法律に基づいて発出さ
れています。
この特措法がほぼ無意味で不完全な法律です。
これが欧米諸国だったら、中国など日本以外のアジア諸国だったらどうなるんでしょ
う?恐らく強制力のない「自粛お願い」なんて無意味でしょうし、上手くいくイメージ
が持てません。
国に権力を与えすぎるのが良くないとか、様々な意見があってこの法律になっているの
でしょうけど、やはり強制力のない法律は無意味です。
法律を改正する方向に動かないんでしょうか?
また同じようなことがあったら、今回と同じで国民に自粛を「要請」するだけなんでし
ょうか?
さすがに無理があります。
法治国家なんだから、法の整備はしっかりやってもらわないと。法律を作るのが政治家
の仕事なんだから、しっかり仕事をしてもらわないと。
アベノマスクがどうとか、政局がどうとか、そんなもんはどうでもいいです。
日本国民の高いモラルを前提とした法律ではなくて、緊急事態下くらいは強制力を
もった法律を行使して、「全国民を国が守る」というような状態にしてくれないんで
しょうか?そんなに難しい事なのかな?
社員を現場に送り出すたびに胸が痛みました。
「何とか感染者が出ませんように」と祈るしかありませんでした。
建設業界なんてそんなものです。
同じような境遇の業種もたくさんあるでしょう。
在宅ワーク推進もいいですが、在宅ワーク出来ない業種・職種の人たちの命を緊急事態
下でどのように守るのか、国会議員の皆さんにはしっかり議論してほしいと切に願いま
す。